「クローズZERO」

いやー、アイドル映画かと思って見たら面白かった!徹頭徹尾「男子の世界」!始めは不良が寄ってたかって「鈴蘭高校のテッペン目指すんだよ!」とか言ってたのを見たときにはつい爆笑したのですが、絶対に笑かさない姿勢で「テッペンはすげえ」と描ききることにより、だんだん「みんながんばって不良のボスになるんだよ!」みたいな目線になっていきました。笑いと喧嘩の配分も絶妙だし、みんな芸達者。ただひとつ残念なのが黒木メイサ。なんでこの子はここに出ているの…?なぜ紅一点で女子が入る必要が…?そんなに彼女の芸能事務所は絶大な力が…?など芸能界の力関係などに思いをはせてしまいます。演技下手だし、なんでか知らないけど歌ってるし。後は完璧だったのになー。「テッペン」というものも、ただただ全員をぶちのめして一番喧嘩が強いやつがボスになるのではなく、各クラスをまとめる番長を強さと力で懐柔して、自分の組織にしていくというところがよかったです。日本人が大好きな戦国時代スタイルで。後はほんとに山田孝之小栗旬の魅力ですよね。この二人はやっぱり魅力あるなーと実感。がりがりの小栗くんとチビの山田くんが相対する不良のボスに見えるんだもんなー。いや、楽しかったっす。IQ50くらいになって楽しめる映画です。

「パンズ・ラビリンス」

スペイン産「ダーク・ファンタジー」。内戦下のスペイン、臨月の母に伴ってゲリラと戦う軍人の母の再婚相手の元に行った少女が、その熾烈な環境に耐え切れずファンタジーの世界に没頭していくという話。この母の再婚相手が、まあ臨月の嫁を戦地に呼び寄せるだけあって、独裁政権の象徴のようなエゴの塊。しかもお母さんはほんとに気弱な「女」の部分ばっかの人。そして内戦が少人数対少人数で、肉弾戦あり、拷問ありとかなりグロい。とちょっと書いただけでもほんとに救いようがない。こんな状況だったら誰だって空想の世界に入れ込むよなあ…。そのリアリティと閉塞感が映画中を漂います。でも彼女が逃げ込むファンタジーの世界も徹底的にダークで不吉なモチーフにちりばめられていて、ビジュアルもおどろおどろしく悲しい美しさ。だからといって「戦争!いくない!!」みたいなチープなテーマがあるわけではなく、徹底的に残酷な現実と不吉なファンタジーを描いていくという話。最後の最後まで彼女には救いがないところがかなり心にクる話です。落ち込んでいるときに見たら心を持ってかれるとは思いますが、妖しい魅力がある作品だと思います。私は「嫌いだけど好き!」って感じ。悲しい真実が描かれているけれど、それに嘘は一切含まれていないという潔さも感じます。

「臨死!!江古田ちゃん」3巻 瀧波 ユカリ

2巻で「江古田ちゃんの自虐がキツすぎる…」と思った私ですが、今回盛り返しました!今回は適度にパンチと哀愁が効いててどれも面白い。ネット恋愛にまで江古田ちゃんはテリトリーを広げてて、それがすげー面白かったです。浮気相手にされてる男子のブログを教えてもらって、女友達とけちょんけちょんにけなす、とか。女ってそういうことを絶対やる!よっぽど自己愛が強い女以外にはブログとか教えないほうが身のためっすよ。なんで自己愛強い女には教えていいかっつーと、そんな女は他人のブログなど見ないからです!

「エマ」10巻 森 薫

これにて大団円。全員がハッピーエンドになって終わり。こういう作者が誰よりも登場人物に思い入れちゃう作品って、大抵読んでる人のテンションを下げてしまうものですが、これは違いました。一緒になって熱くなって、ちょっと涙ぐんだりもできます。この作者の力量をガッツリ感じました!ダレることなく10巻続いて、ほんとに楽しかった!

「わが家の夕めし」池波 正太郎

ねえ、このタイトルで表紙見たら、100人が100人食に関するエッセイだと思うよね?そんでちゃんと解説も読まずに買うよね…?!ね?!これぜーんぜん食のエッセイじゃねえの!!パンフとかに書いた短文がずらーっと入ってるだけなの!や、やられた〜!!池波大先生にたばかられるとはショックでかすぎる…!

「坂道のアポロン」 1巻 小玉 ユキ

せっかくの連載ものに水を差すのも悪いなと思うのですが…。この人のよさってやっぱり「すこしふしぎ」的なファンタジーが現代的なスタイリッシュな絵で描かれることで一番輝くのかなー、と。細かな心の動きはよいのですが、この現代的な絵柄で時代ものっていうのがどこかに違和感があって…。かっこいいもの=ジャズっていうのもなんか「裕次郎かよ!」みたいな。まあ裕次郎なんでしょうが…。うーん…。なんでこの物語なのかっていう決め手がちょと欠けるなあ…。実はあんまり言いたいことっていうのがない人なのかしら…。

「職業欄はエスパー」森 達也

始めはエスパーと名乗りテレビに出演している人たちを密着していくのですが、だんだん彼の目が「異端の者を見る『世間』という名のメディア」に移り行くので、この人の生涯のテーマはメディアとそれに映る人との関係性なんだろうな、と。異端VS世間という構図に興味を持った行き着く先が「死刑」というのはすごくよくわかります。最近の「悪いやつはみんな死刑!」と言う人が非常に多いという論調は私もすごく怖いし乱暴だなと思います。異常と正常の差って紙一重という薄氷が、「世間」ってフィルターを通すとすげー分厚いものになっているってところも恐ろしいし。でもなんというか、別に私にとってその「世間」っていうのはイコール「メディア」ではないので、ちょっと残念。まあ、メディアの人が自分のアイデンティティを模索するということなんでしょうが。