「パンズ・ラビリンス」

スペイン産「ダーク・ファンタジー」。内戦下のスペイン、臨月の母に伴ってゲリラと戦う軍人の母の再婚相手の元に行った少女が、その熾烈な環境に耐え切れずファンタジーの世界に没頭していくという話。この母の再婚相手が、まあ臨月の嫁を戦地に呼び寄せるだけあって、独裁政権の象徴のようなエゴの塊。しかもお母さんはほんとに気弱な「女」の部分ばっかの人。そして内戦が少人数対少人数で、肉弾戦あり、拷問ありとかなりグロい。とちょっと書いただけでもほんとに救いようがない。こんな状況だったら誰だって空想の世界に入れ込むよなあ…。そのリアリティと閉塞感が映画中を漂います。でも彼女が逃げ込むファンタジーの世界も徹底的にダークで不吉なモチーフにちりばめられていて、ビジュアルもおどろおどろしく悲しい美しさ。だからといって「戦争!いくない!!」みたいなチープなテーマがあるわけではなく、徹底的に残酷な現実と不吉なファンタジーを描いていくという話。最後の最後まで彼女には救いがないところがかなり心にクる話です。落ち込んでいるときに見たら心を持ってかれるとは思いますが、妖しい魅力がある作品だと思います。私は「嫌いだけど好き!」って感じ。悲しい真実が描かれているけれど、それに嘘は一切含まれていないという潔さも感じます。