「世界悪女物語」澁澤龍彦

古今東西の有名な悪女を扱った一冊。いろんな残虐な女が出てくるんですが、ダントツ残酷度がすごいのが中国と中世ヨーロッパ。とにかく何かあると必ず拷問すっからね。しかも悪女だけあって殺すのが楽しそうってところが背筋が凍る。その前だともっとトライバルというか、「ムカつく〜!邪魔〜!殺す〜!」で殺してる感じです。あとがきで相変わらず昭和の文豪のふんどしで相撲を取るのがお得意な三輪様が澁澤御大について語ってるんですが、そこで「やっぱり肉を食べてる民族は残虐度が違いますよ」と書いてて、それだけは三輪様に全面賛成しました。下世話な好奇心が満たされる楽しい一冊ですが、朝通勤で読んでて「私朝からなんで処女の生き血をすすったエリザベートの話読んでるんだろ…」とちょっと怖くなりました。

「東京の男の子」魚喃キリコ, 大久保ニュー, 安彦麻理絵

この三人が東京の男の子について語る、んですが一番濃いのはお互いの家庭環境の話。仲のいい3人だからこそ言えるような話をばんばんしてくれててちょっとひやひやします。ただ「女が抱えるどろどろって誰しも同じだな〜」ってのは実感します。一番面白いのは東京の男子の街角スナップに突っ込みを入れまくるコーナー。安彦麻理絵がちょっと自己愛の強そうな男子を見ると、必ず「こいつはクンニしない!」って訴えるところに笑いました。でもほんとに失礼な話ですが、言われてる人、みんなしなそう…。しなそうな顔ってなんだよな。それに対し「すごいクンニをする」と言われてる男子もいて、「すごいしそう」ってのも失礼な気も…。でもひとつもうそがなく正直すぎるくらい正直な一冊です。

「わたしの修業時代」シドニー=ガブリエルコレット

コレットが晩年最初の結婚から離婚までの若い自分を振り返って書いた懐古文。つかコレット、こんなフルネームなんだ…。長げえ。何も知らない田舎の小娘が年上の旦那に連れられてパリに出て、旦那のゴーストライターをすることで文壇に出て行くまで。結構旦那のことをボロクソに書いているかと思ったんですが、割と冷静な文体でびっくり。でも外見がダサいとかそういうことを臭わす文章はやたらなめらかで、そういうところは「やっぱ離婚ってすげーエネルギーいるなあ」とか思います。当時の華やかな文壇の表と裏、華やかな女友達関係も面白いです。女優とか高級娼婦とかの絶対歴史に残らない影の部分も垣間見れて、ミーハー心がくすぐられました。やっぱフランス女は高慢ちきで面白いっすよ。

「一緒に遭難したいひと」3巻 西村しのぶ

私にとって西村しのぶとは、メンタルなコンディションがよいと「いいな〜。こんな風に自由に素敵に暮らしたいぜ〜!」と思い、落ちてるときに読むと「こんな奇麗事だけで世の中回るか〜〜〜!!」となる漫画家…。今回気づいたことは、なかなか本が出ないうちに、私はこの二人の年齢を追い越してしまったのでは…?ということ。彼女らいくつの設定なんだっけ…。実は三十過ぎてるとかそんなことだったっけ…?まあ、二十代の話なら美しい奇麗事、三十代なら「ありえね〜」かなあという不思議な境界線にいる漫画だと思います。

「光の海」小玉ユキ

これはすご〜〜くよかった!この世界に人魚という生き物がいるという前提のお話。どれも繊細で、でも読んでてしんどくならない程度に人間の醜悪なんかも描かれてて、こういうの好きっす。

「破壊者ベンの誕生」ドリス・レッシング

ノーベル文学賞受賞のため復刊!」とあったので買いました。子沢山の美しい家庭を描いていた夫婦の4番目の子供に、家庭を壊す異端の子が生まれてしまう話。代表作ではないのでそんなにインパクトはないのですが、がつーんとは来ます。この異端の子を追い出そうとする人、守ろうとする人、この子を産んだ母親も異端だと考える人など、「異端」としてじゃなくて「障害」とかに置き換えてみたら背筋が寒くなるような気持ちになります。こういったショックを人に与えるタイプの作家なんですね。

「ホリデイ」

恋に破れたキャリアウーマン2人がイギリスとロサンゼルスで家のエクスチェンジをするラブコメ。クラシックな内装の重厚な家と鬱蒼とした天気のイギリスとデカい家に太陽がさんさんと降り注ぐカリフォルニアの対比も面白いし、2人がキッチリそれぞれ旅先での人間関係で癒されていくところもちゃんとできてます。ただ、なんといってもこの映画が「面白い」と言えるゆえんはキャメロン・ディアスのチャームのみだと思います。彼女が喜怒哀楽をストレートに表すことで、こっちも感情移入できるし一緒に恋の始まりを楽しめる。これ、彼女じゃなかったら危険だったなあと思います。なぜならやっぱりもう一人のケイト・ウィンスレットの恋についケチを付けてしまうから…。彼女は別に新しい恋で立ち直るんじゃなく、新しい友人との出会いが一番の救いになるし…。恋する必要もないよね…。しかも恋の相手がジャック・ブラック。これは鉄板でダメでダサい彼のよさに彼女が気づくってパターンかと思ってみてたら、一切外見とかに関するツッコミはなく「気のいい青年」として徹頭徹尾扱われてるので、見てるうちに「なんで彼はこの役を…」とかどうでもいいことばかり考えてしまいました。いや、でもこれでジュード・ロウのハンサムさもちゃんと実感できたし、何よりキャメロン・ディアスは超・超・超かわいい。まあ「そういう映画じゃね?」と思うし、「キッチリそういう映画でした!」とも思います。歯切れわりー。